映画『パンズラビリンス』のあらすじとレビュー|内戦で不安定な状況を生き抜く少女の美しいダークファンタジー

洋画

内戦後のスペインで、主人公のオフェリアは、森の中で妖精に導かれて迷宮の入口へ行きます。

彼女がどう試練を乗り越えていくのか、彼女を取り巻く大人たちはどう行動するのか、その世界観に引き込まれる作品です。

2007年10月6日に公開された映画『パンズラビリンス』は、第79回アカデミー賞で撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞しました。

この作品のみどころや感想など、感じたことをご紹介します。

映画『パンズラビリンス』の予告編

<パンズラビリンス・予告編>

舞台は内戦が終わった後のスペイン。

内戦で父を亡くした少女オフェリアは、母の再婚相手である陸軍のビダル大尉が陣を張る森の中の家に、母と共に移り住みます。

母のお腹には、大尉との子供が宿っていて、もうすぐ生まれる予定です。

そんな状況で、オフェリアは森で妖精と出会い、その妖精に導かれて、森の中にある迷宮へ辿りつきます。

そして、迷宮の番人パンと出会い、3つの試練に合格すれば、オフェリアが本来住むはずである地底の国へ移り住めると言われます。

ビダル大尉に馴染めず、孤独を抱えていたオフェリアは、その試練を受けることになるのですが……。

映画『パンズラビリンス』の解説

内戦後のスペインで、不安定な状況を生きる少女の悲しく、そして時に残酷だけど美しいダークファンタジーです。

この映画は、世界各国で映画賞を受賞し、第79回アカデミー賞では、撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞しました。

ちなみに、タイトルのパンとは、ギリシャ神話に登場する牧神のことです。

パンは、ヤギの角を生やした姿で描かれることが多いのですが、後にキリスト教がヨーロッパ全土に広がると、悪魔の姿としてしばしば羊の角を生やしたものが描かれます。

これが牧神パンの成れの果てなのかは、さておき、妖精と戯れたりする時点でオフェリアの行動は、反キリスト教的行為と見なされます。

映画では、そういう宗教的背景は描かれませんが、大人たちの世界=キリスト教的世界、オフェリアの夢みる地底の国=反キリスト教的世界と対比して考えると、より深く映画を鑑賞することが可能になるかもしれません。

映画『パンズラビリンス』のあらすじ

内戦後のスペインは、未だに独裁政権に反抗するレジスタンスによる活動が各地で展開されるなど、穏やかさとは無縁の国。

そんな中、内戦で父を失い、母は政権の軍人ビダル大尉と再婚し、大尉の子をお腹に宿します。

もうお腹も大きく、移動するのも難儀なのに大尉は自分の子を、自分が指揮する砦の中の家で産ませたいようで、母親とオフェリアを車で森の砦の中の家に連れてこさせます。

家には家事を切り盛りする家政婦が何人かいて、オフェリアはその中の一人メルセデスと打ち解けますが、実は彼女はレジスタンスの密偵でした。

ある日、森の中でオフェリアは、妖精と出会います。

そして、その妖精に導かれて森の中にある謎の迷宮の入口に辿りつきます。

そこで待っていたのは、パンという迷宮の番人。

パンは、オフェリアに3つの試練を課し、その試練に合格すればこの迷宮の奥の地底の王国の住人になれると言います。

そこで、オフェリアは試練に挑むのですが……。

映画『パンズラビリンス』のみどころ

妖精やパンは、CGなどで合成されて描かれているのですが、そんな彼らの住む地底の妖精の国がとにかく美しいのが、まず見どころの一つだと思われます。

しかし、パンがギリシャ神話では牧神として敬われていたのに、キリスト教世界では悪魔的に扱われていたように、妖精世界にも美しさと残酷さの二面性があります。

特に、オフェリアが第2の試練に立ち向かう時は、その残酷さと恐ろしさが強調されます。

そして、最後の試練の選択もまた、残酷な二択をオフェリアは迫られることになります。

彼女がどう試練を乗り越えて行くのか、そして彼女を取り巻く大人たちはどう行動するのか、息をするのも忘れてしまう程に映画世界に没入出来ること間違いなしです。

映画『パンズラビリンス』の感想

この映画は、見る人を選ぶ映画だと言えます。

とにかく普通のファンタジー映画だと思ってはいけません。

ちなみに私は、この映画をとても美しく素晴らしいものと思いましたが、私の妹の友人は鬱展開な映画と評価しました。

また、この映画で家政婦のメルセデスがオフェリアのために歌ってあげる歌があるのですが、あの歌のどこか悲し気なメロディが印象的で、私は好きです。

残酷なシーンも大丈夫、むしろ大歓迎という方はこの映画を気に入るかもしれません。

映画『パンズラビリンス』の登場人物・キャスト

パンズラビリンスの登場人物・キャストをご紹介します。

オフェリア : イバナ・バケロ
パン:ダグ・ジョーンズ
ビダル大尉 :セルジ・ロペス
カルメン:アリアドナ・ヒル
メルセデス:マリベル・ベルドゥ
Dr.フェレイロ:アレックス・アングロ
ガルセス:マノロ・サロ
ペドロ:ロジェール・カサマジョール
ペイルマン:ダグ・ジョーンズ

映画『パンズラビリンス』のスタッフ

パンズラビリンスのスタッフをご紹介します。

監督:ギレルモ・デル・トロ
製作:ギレルモ・デル・トロ、ベルサ・ナヴァロ、アルフォンソ・キュアロン、フリーダ・トレスブランコ、アルバロ・アグスティン
脚本:ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
編集:ベルナト・ビラプラナ
美術:エウヘニオ・カバイェーロ
セットデザイン:ピラール・レベルタ
音楽:ハビエル・ナバレテ
音響:マルティン・エルナンデス、ミゲル・ポロ
特殊効果:レイエス・アバデス
視覚効果:エヴェレット・バレル
衣装デザイン:ララ・ウエテ、ロシオ・レドンド